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zoom RSS シロバナマンジュシャゲ:眠っている赤色遺伝子

<<   作成日時 : 2009/09/20 23:46   >>

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シロバナマンジュシャゲ (Lycoris albiflora Koidzumi) はシロバナヒガンバナともよばれています。どちらが標準名なのか分かりませんが、東大付属の小石川植物園のホームページには、シロバナマンジュシャゲの名称が使われており、京都府立植物園のホームページには、シロバナヒガンバナとなっていました。つまりどちらでもいいと思いますが、ここでは、シロバナマンジュシャゲの方を使っておきます。

シロバナマンジュシャゲは、花色は違いますが、花のかたちはヒガンバナ (Lycoris radiata Herb.) によく似ています。しかし、前者は後者の単なる突然変異体ではなく、ヒガンバナと黄色い花をもつショウキズイセン (Lycoris aurea Herb.) との自然交雑による雑種と考えられているようです(朝日週刊百科「世界の植物」など)。牧野博士もすでにそのような雑種と推定しています(牧野富太郎植物記2 あかね書房)。

わが家の庭のシロバナマンジュシャゲが今年も咲きそろいました。そしてちょっと珍しいものを見ました。1つの花の隣り合った2枚の花被(1枚は外花被、もう1枚は内花被)に、赤い部分が見つかったのです。この外花被は丁度半分の右側(先端に向かって)が赤、内花被は対照的に左側が赤です。これは何を意味するのでしょうか。

赤、青、紫などの花色は、通常アントシアニンによる色です。アントシアニンの合成過程は複雑で、多数の遺伝子が関与しています。その遺伝子のどれか一つが存在しなかったり、または存在していてもなにかの理由で働かなかったりすると、アントシアニンができません。アントシアニンができなければ、赤や青の色がつかず、白や黄色の花になります。シロバナマンジュシャゲの花が白いのも、この理由によります。

ところが、この植物の花被に赤い色が現れたということは、アントシアニン合成経路の遺伝子は全部そろっているということになります。ただ、その中の1つに何らかの理由があって、通常は働いていないのです。つまりその遺伝子(仮に赤色遺伝子と名付けます)は眠っていると考えたら理解しやすいでしょう。

この赤色遺伝子は、シロバナマンジュシャゲの祖先では、目覚めていて、アントシアニンの合成に関与していたと考えられます。しかし、どの世代かで、赤色遺伝子に突然変異が生じたか、遺伝子サイレンシング(突然変異によらない遺伝子の不活性化)が起きたかによって、眠ってしまったのでしょう。シロバナマンジュシャゲの中に眠っている赤色遺伝子は、ヒガンバナの中で働いていた遺伝子と同一のものかも知れません。ヒガンバナとショウキズイセンの自然交雑ののちに、赤色遺伝子にサイレンシングが起ったということも充分考えられます。

花被に赤い部分が生じたことが、復帰突然変異によるものか、サイレンシングの解除によるものかは分かりません。しかし、眠っていた赤色遺伝子の目覚めを見たことで、シロバナマンジュシャゲから、新しい赤花や斑入りのマンジュシャゲが生じることも、ひょっとしてあり得ることではないかと思いました。

もう一つの興味は、花被の丁度半分が赤い帯になっていること、およびその赤い帯が外花被と内花被の隣接部分にまたがって生じていることです。すると、眠りから丁度覚めた赤色遺伝子をもつただ一つの細胞(花の原基の中の花被をつくることになる1細胞)が分裂して、外花被と内花被の半分ずつの造成を担当したことになります。

と、まあ、こんなことを考えて、ぼんやり過ごした一日でした。

画像

庭のシロバナマンジュシャゲ



画像

花被に赤い帯をもつ花



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コメント(17件)

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白花は赤と黄色の花で自然にできた?
人間が作ったものだと思っていました。
赤と黄色からどうして白ができるんでしょ、不思議〜!
確かに白と言っても良く見ればうす〜い黄色でしたね。
でも最後のようなのは初めて見ました。
やはり赤と黄色なのかと実感しました。
池田姫
2009/09/21 12:38
こんにちは
我が家の近くの畑には、なんとなく赤味がかったシロバナを見ることができますが、本当に赤いですね。
こんな花初めて見ました。
珍しいですね。
YAKUMA
2009/09/21 16:09
木曜日の帰り道さん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2009/09/21 19:34
池田姫さん、コメントありがとうございました。
まだちょっと「不思議」の段階ですね。遺伝子の不活性化を引き起こすメカニズムについては、実験しやすい植物で研究が進んでいるので、マンジュシャゲの場合は「多分こういうことだろう」程度の説明ができるようになるかも知れません。
エフ・エム
2009/09/21 20:04
YAKUMAさん、コメントありがとうございました。
たしかに、ほんとうに赤いんです。遺伝子の完全復帰ですね。
再びこういうことが起るかどうか、来年に期待しています。
エフ・エム
2009/09/21 20:16
おはようございます。ぼくも来年、この株がどうなるのか興味があります。ヒガンバナは球根で増えますよね。だからこの株はもちろん、違う株がどうなのか、ということも楽しみです。土壌などの環境のなせるワザなのかどうか、また報告をお願いします。
宮城野
2009/09/22 05:34
宮城野さん、コメントありがとうございました。
一応この株をチェックしておきました。この株が復帰変異を起こし易い株であればおもしろいのですが、そういうこともなかろうといささか悲観的です。どちらにしても、来年、結果を報告いたします。
エフ・エム
2009/09/22 07:39
とても興味深い花の写真が初めてなら、興味深いお話も初耳。目を丸くして拝読しました。
彼岸の話題としても、味わい深く、きのう彼岸法要で聞いた寺僧の講話を思い出しながら、しみじみと自然界の生命の営みの不思議を思っています。
それにしても、いちど見たら忘れがたい写真です。
さとみ
2009/09/22 13:37
面白い記事を読ませて頂きました。白花曼珠沙華、きれいですね。その下の写真は、赤色遺伝子が復活?来年が楽しみですね。どのような変化があるのでしょうね??
みーたん
2009/09/22 17:54
白い花びらの赤い筋を見ただけで、
これだけぼんやり考えられるっていいですね。
うちにも突然変異起こらないかしら・・・
園芸種にはいろんな色が出ていますが、
これはヒガンバナとは違う種類でしょうか?
ミセスサニー
2009/09/22 18:46
さとみさん。コメントありがとうございました。
ヒガンバナは、生物学的には、春の気温の上昇に感受して花芽ができ、秋の気温の低下による調節で、彼岸頃に咲く運命になっているらしいです。しかし、あのかたち、色、なにか彼岸からやってきたような印象を与える花です。でも、あの花に対する感じ方、人によっていろいろなのでしょうね。
エフ・エム
2009/09/22 20:32
みーたんさん、コメントありがとうございました。
赤色遺伝子が球根を作る細胞の中で復活すれば、赤いシロバナマンジュシャゲが得られる可能性はあると思いますが、この場合は末端にちかい花の細胞での復活なので、来年赤は出ないと思います。一応来年も見てみますが。
エフ・エム
2009/09/22 20:43
テルツマさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2009/09/22 20:46
ミセスサニーさん、コメントありがとうございました。
私にも品種改良のことはよく分かりません。日本のヒガンバナやシロバナマンジュシャゲは三倍体なので交雑に利用することは難しいと思いますが、ヒガンバナ属の植物には交雑に使えるものがいくつかあって、それらからいろいろな色の雑種がつくられているようです。
エフ・エム
2009/09/22 21:26
宇宙人が来て、遠い宇宙から来た証拠を残して帰ったのではありませんか?
時間が無くて、一寸のイタズラで終わったとか。
ひこうちゅうねん
2009/09/23 03:39
ひこうちゅうねんさん、コメントありがとうございました。
宇宙人もあちこちに証拠を残すのに、時間がないのですね。
宇宙人の足跡をこれからも探してみたいと思います。
エフ・エム
2009/09/23 07:39
Tatehikoさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2009/09/25 22:29

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