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zoom RSS ヒメジョオンとハルジオンのこと

<<   作成日時 : 2010/02/14 22:51   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 13 / トラックバック 1 / コメント 18

寒くて雨模様の日が続いています。私はまだ冬眠中です。前回、猛烈なセイヨウタンポポのことを書きましたので、ついでに外来植物としてやはり猛威を振るっているヒメジョオン (Erigeron annuus (L.) Pers.) とハルジオン (Erigeron philadelphicus L.) のことを少し述べて見ようと思います。

セイヨウタンポポは一年中花をつけ、実を結ぶという点で、多少は季節性のあるヒメジョオンより、猛烈さは勝っていると思いますが、ヒメジョオンの方は、外観上非常によく似た仲間であるハルジオンとタッグを組んで、セイヨウタンポポに対抗しているように見えます。つまり、ハルジオンは4月頃から7月頃まで花を咲かせ、6、7月頃から花を咲かせるヒメジオンに「後は頼みましたぞ」、ヒメジョオン「お任せなすって」と、バトンタッチするのです。ヒメジョオンもハルジオンも北米原産ですから、きっと気心の知れた仲間なのです。ヒメジョオンは、私の観察では、12月まで見られます。

こんな仲のよさそうな、ヒメジョオンとハルジオンですが、案外違っているところがあります。形態的には、ヒメジョオンは茎の内部がつまっていますが、ハルジオンは茎が中空です。ヒメジョオンの葉の基部は茎を抱いていませんが、ハルジオンの葉の基部は茎を抱いています。ヒメジョオンの花のつぼみは横を向いているのが多いですが、ハルジオンのつぼみはほとんど全部下を向いて、何故かうなだれています。ヒメジョオンもハルジオンも筒状花には冠毛があるのですが、ヒメジョオンは舌状花に冠毛がなく、ハルジオンにはあります。舌状花は、ヒメジョオンよりハルジオンの方が細く、たくさんあって、繊細な感じがします。

ヒメジョオンとハルジオンのもっとも異なる特徴は、繁殖の仕方です。先ず、ヒメジョオンは越年草(二年草)なのに、ハルジオンは多年草であること。次に、ヒメジョオンは三倍体の個体 (3X=27) が大多数で、セイヨウタンポポのように、主として無配偶生殖 (apomixis) の一つの型である複相胞子生殖 (diplospory) によって種子をつくること (Noyes and Rieseberg [2000] Gentics 155: 379-390)、ハルジオンは二倍体 (2X=18) で、受精によって種子をつくることです (Itoh and Miyahara (1984) Weed Reserch (Japan) 29: 301-307)。

ただし、ヒメジョオンも花粉を作り、同種や異種を授精させて、種子を作らせることができます。この場合、雑種を作るのは、ヘラバヒメジョオン (Erigeron strigosus DC.) というやはり北米原産の帰化植物で、受精によって種子をつくる二倍性の種 (2X=18) です。幸いにして、ヒメジョオンやハルジオンと雑種をつくる在来種はなさそうですので、在来タンポポと雑種をつくるセイヨウタンポポよりはましでしょうか。

上述のように、ヒメジョオンは複相胞子生殖 (diplospory) によって種子をつくります。前回も述べましたように、複相胞子生殖とは分かりにくい述語ですが、胚嚢母細胞で減数分裂が起こらず、体細胞と同じような分裂が起こり、二倍体の大胞子(胚嚢をつくる細胞)が作られるということです。そのあと、受精することなく自律的に胚嚢の中の卵細胞から胚に経過してゆき、胚乳とともに種子をつくることを単為発生 (parthenogenesis) とよんでいます。また、単為発生を起こすために受粉を必要とすることがあり(極核のみ受精する場合もある)、このことを偽受精 (pseudogamy) と呼びます。しかし、ヒメジョオンの種子発生には、偽受精も必要ありません 。

(注:単為発生を表す英術語parthenogenesisは、単為生殖と訳されることが多く、意味に曖昧なところがあります。したがって、著者によっては、parthenogenesisと言わず、autonomous development、すなわち自律的発生という術語を使っています。)

ヒメジョオンの複相胞子生殖と単為発生は、連鎖していない別々の優性遺伝因子によって支配されていることが分かってきました (Noyes, Baker and Mai (2007) Heredity 98:92-98)。この研究では、単為発生、すなわち卵細胞の胚への自律的発生と胚乳の自律的発生とは共通する1つの遺伝因子によっているように見えるとしています。しかし、胚発生と胚乳発生とは別々の遺伝因子が制御しており、これらの遺伝子が緊密に連鎖している可能性も考えられます。

無配偶生殖の研究はまだ古典遺伝学の段階にありますが、今は植物のいろいろな遺伝子が単離され、その構造や機能が続々と明らかにされている時代です。分子生物学研究の技術も日進月歩ですから、このような生命現象に興味をもつ研究者が何人も現れるなら、そのうち無配偶生殖の遺伝的機構が明らかになる日が来るように思えます。

ヒメジョオンもハルジオンも、個人的には嫌いな植物ではありません。ヒメジョオンもハルジオンも、ときにうっとりするような美しい花を咲かせることがあり、そういう花をしばし眺めたり、写真に収めたりしています。以前、たいへん美しいヒメジョオンハルジオンの写真をブログに載せたこともありました。

しかし、ヒメジョオン、ハルジオンとも、セイヨウタンポポ同様、環境省の要注意外来生物に指定されているように、厄介な雑草であることに間違いありません。それについてはもう少し勉強したいと思っております。

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ヒメジョオン



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ハルジオン



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コメント(18件)

内 容 ニックネーム/日時
こんな綺麗な花なのですね。
雑草、嫌われ者、、、そんなイメージ無いです。
ユーミンの“ハルジョオンヒメジョオン”、好きな曲ですが、次に聞くときは、花を思い浮かべて聞けます。
T&M
2010/02/15 10:13
こんにちは。似た花でありながら、かなりの違いがありますね。私は「姫に穴なし、春に穴あり」としか見分け方を知りませんでした。色々と教えて頂き勉強になり有り難うございました。
kako狸
2010/02/15 17:07
dragon pearlさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2010/02/15 19:20
T&Mさん、コメントありがとうございました。
ヒメジョオンもハルジオンも花の色や大きさに変異があって、中にはとてもきれいなのがあるのです。そういうのを栽培品種にしたらいいのではないかなど考えています。
ユーミンの歌、思い出しました。改めて聞いてみたいです。
エフ・エム
2010/02/15 19:26
羅輝さん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2010/02/15 19:27
kako狸さん、コメントと気持玉をありがとうございました。
今はすぐ、二種を見分けることができますが、最初はやはり茎を折って調べていました。あれが一番分かりやすいですね。畑などの強雑草なのは分かっているのですが、今年もまた出会うのが楽しみな植物です。
エフ・エム
2010/02/15 19:35
こんばんは
子どもの頃、家の周りにたくさん生えていました。
でも、ハルジオンとヒメジョオンがあることは知らず、
皆同じと思っていたので、どちらがあったか、両方あったか覚えていません。
私の妻は子どもの頃、はなを「目玉焼き」に見立てて御ままごとをしていたとしていたといっていました。
身近な植物となっているのですね。
YAKUMA
2010/02/15 21:14
YAKUMAさん、コメントありがとうございました。
ヒメジョオンとハルジオンはよく似ていて、春から秋まで同じ花が咲いているような感じですね。
おままごとの「目玉焼き」、なるほど、素敵な思いつきですね。さすがです。近頃の子どもはこんなこと思いつくでしょうか。
エフ・エム
2010/02/16 08:51
ヒメジョオン、ハルジオンの違いが、あまり良く分からなかったのですが、これでスッキリしました。
キレイな花ですよね。
凸凸!
みーたん
2010/02/16 21:06
ヒメジョオンとハルジオンの違いをまとめてくださっているので、とても参考になりました。
そういえば、ハルジオンの舌状花は繊細ですね。
ヒメジョオンは授精しないで子どもを作ることができるんですねー。
繁殖力の強い植物には多いんですか植物の生殖はとっても不思議です。
風さん
2010/02/17 12:08
みーたんさん、コメントありがとうございました。
よく似ているようで、案外違うところが多いです。茎をちょん切ってみなくても、葉のつきかたや、つぼみや花のようすでよく分かります。
エフ・エム
2010/02/17 17:31
風さん、コメントありがとうございました。
受精しないで種子をつくる植物は、キク科やイネ科でよく報告されています。それだから繁殖力が強いということではなさそうですが。またあ、このようなこともときどき書いてみようと思っています。
エフ・エム
2010/02/17 17:48
良くお調べになりましたね。
実際は・・・姫には難しいです。
名前もヒメジオンだったかハルジョオンだったか混同ーー、
蕾の垂れ下がりは見ます。
でもそれがどっちの花だったか・・・
頭が悪いと思い知らされる花です^^
池田姫
2010/02/17 17:57
池田姫さん、コメントありがとうございました。
ヒメジョオンはヒメジオンともいうらしいのですが、別種にヒメシオンというのがあるので、ヒメジョオンの方が標準和名になっているのでしょう。長田武正「野草図鑑」(保育社)には、「ヒメジョオンの名のもとになった女菀はこれ(ヒメシオン)だともいう」とありました。つまり、ヒメシオンの別名がジョオンで、それにヒメがついてヒメジョオンになったということでしょう。
エフ・エム
2010/02/18 08:24
hummingさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2010/02/20 08:05
こんにちは
我が家の庭にはいつの間にか住みついた、ハルジョオンがピンクの花を咲かせます。(ちなみに関東です)

九州の里(福岡県)では、うすーい紫の花だったので(ハルジョオンだったかは不明ですが…)地方によって色が違うのが、いまだに不思議でたまりません。

紫外線の強さなどで色が変わるのでしょうか?
それとも外来種との事なので、九州の種類と関東の種類とでは、出身地(国)が違うのかもしれませんね???
まんじゅ猫
2010/03/19 19:55
まんじゅ猫さん、コメントと気持玉をありがとうございました。
ハルジオンは白ないしピンクの花が多いですね。九州のハルジオンを見たことがないので、分からないですが、薄紫なのですか。不思議ですね。
ハルジオンは最初関東に広まり、のちに全国に広がったと考えられているようですが、九州まで移って行く過程で変化したのでしょうか。九州のハルジオンがどんな様子か、実際に見てみたいです。
エフ・エム
2010/03/19 21:50
さとみさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2010/03/22 20:45

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