道草の時間

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zoom RSS チューリップ雑記

<<   作成日時 : 2013/04/24 11:46   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 39 / トラックバック 1 / コメント 26

チューリップの花はそろそろ終わりです。わが家の小さな庭のチューリップも十分に目を楽しませてくれましたが、すべて終わってしまいました。でも東北や北海道ではこれからでしょうか。

チューリップが日本に入ったのは、江戸時代の文久年間だそうで、このエキゾチックな花を初めて見た人はずいぶんびっくりしたことでしょう。チョンマゲがチューリップを眺めているシーン、どうもしっくりきません。でも本格的に広まったのは明治時代とのことです(朝日週刊百科「世界の植物」)。鹿鳴館時代ともなれば、チューリップも落ち着いて咲くことができたでしょう。

上記「世界の植物」には、チューリップ (Tulipa gesneriana L.) はトルコのアナトリア高原から中央アジアのサマルカンドで生じたと考えられるが、いまだ原産地ははっきりしないとあります。1554年、神聖ローマ帝国の大使ビュスベクによってトルコからヨーロッパに伝えられたそうです。チューリップという名は、ターバンを意味するトルコ語tulband(トゥルバンド)に由来するとか。

17世紀には、チューリップのたくさんの品種が作られ、チューリップの球根にとてつもない高値がつき、1634~1637年にはオランダアムステルダムを中心に、チューリップ取引ブームによる投機の加熱によって、「チューリップ恐慌」が起こりました。資本主義経済の初期段階における代表的恐慌だそうです(ブリタニカ電子辞書版)。

そして奇妙なことに、白い縞の入った花が咲くチューリップの球根がチューリップマニア(Tulipomania)とよばれた人たちに愛好され、ものすごい高値で取引きされたのです。Viceroyという縞の入った品種の球根1つは、小麦なら4トン、ライ麦なら8トンに相当する価格だったそうです。チューリップの縞入り品種Viceroyの画像や球根1球の当時の価格については、ペンシルヴァニア州立大学のB.W. Ickes教授のホームページからpdfによって見ることができます。ヤン・ブリューゲル(息子)の風刺画もおもしろいですね。
http://econ.la.psu.edu/~bickes/tulips.pdf#search='Viceroy+tulip'

17世紀のオランダの画家はよくチューリップの絵を画いています。そのほとんどが縞の入った花です。例えば、
アンブロジウス・ボスハールト (Ambrosius Bosschaert)
http://www.googleartproject.com/artist/ambrosius-bosschaert/4127074/

ヤン・ブリューゲル 父 (Jan Brueghel the Elder)
http://www.abcgallery.com/B/bruegel/jan1.html

ヤン・ファンハイスム (Jan van Huysum)
http://www.bbc.co.uk/arts/yourpaintings/paintings/a-delftware-vase-of-tulips-anemones-roses-and-other-flowe224195

など。

ところが、花に生じた縞はウイルスによる病徴であることがずっと後になって分かりました。チューリップモザイクウイルス(=チューリップブレーキングウイルス tulip breaking virus)によって引き起こされる、チューリップにとっては最もこわい病気の一つです。このウイルスはアブラムシの媒介によって他のチューリップやユリにどんどん伝染し、薬では治すことができないので、病徴が出たチューリップは引き抜いて焼いてしまうほかありません。17世紀のチューリップマニアは、とんでもないものを法外な値段で買ったものです。

チューリップモザイクウイルスにかかった花の写真は富山県のホームページ「チューリップ王国とやま」の中に見ることができます。
http://tulip.agri.pref.toyama.jp/tulip/kiso_04.html#10

「(チューリップの花は)花としてはととのった形をしていますが、実はむすびません。繁殖はりん茎によっておこないます。」(牧野富太郎植物記 あかね書房)と牧野先生らしからぬ記述がありますが、チューリップは実も種子もでき、品種改良にも品種間交雑が利用されています。私はチューリップの実を見たことがなく、またウェブを検索しても写真による画像を見つけることができませんでしたが、理科ネットワークのホームページにイラストが出ていました。ユリ科だけあって、やはりユリの実に似ていますね。
http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0370a/contents/hana/images/ils_juhun_tulip.jpg

わが家のチューリップ(品種不明)の花を覗いてみたら、ちょっとおもしろいものが見えました。

画像

赤い花


赤い花なのですが、花弁の基部は黄色です。花に赤色を与える遺伝子(仮に赤色遺伝子とよぶ)の発現が巧みに制御されていることが想像できます。

画像

画像

黄色い花(1)


花弁に赤い筋が入っています。この筋があることにより、この品種も花に赤色遺伝子をもっているが、その発現が何らかの原因で不活性化されていることを示します。赤色部分は赤色遺伝子がその発現能力を復活させたのです。赤色遺伝子に入り込んでそれを不活性化していたトランスポゾン(動く遺伝子)が抜け出たためか、赤色遺伝子の発現を制御する遺伝子に突然変異が生じたのかなど、いくつか原因が考えられます。以前、シロバナマンジュシャゲの花に赤い筋を見つけ、ブログに載せたことを思い出しました。
http://michikusanojikan.at.webry.info/200909/article_10.html

画像

画像

黄色い花(2)


花弁に緑の筋が入っています。言うまでもなく、花弁にも葉緑体や葉緑素を合成する遺伝子は全部揃っているのですが、それらの遺伝子の発現が抑制されているのです。この緑の筋は花弁で葉緑体の構造または葉緑素の合成に関与する遺伝子の発現がなんらかの原因(例えば抑制遺伝子の突然変異)で復活したことを意味します。

この花にも小さな赤い筋がありますが、分かりますか。

赤や緑の筋はもともと1個の細胞に生じた変異が細胞分裂によって数を増し、面積を広げるのです。したがって、その変異が花芽形成のより早い時期に起こるほど、面積は大きくなります。

「サイタ サイタ チューリップ ノ ハナ ガ・・・」(詞:教育音楽協会 作曲:井上武士 昭和7年)。幼児にクレヨンと画用紙をわたし、花の絵を画いてごらんと言えば、大抵の子どもはチューリップを画くのではないかと想像します。無邪気で明るいチューリップは大人にも子どもにも愛される花です。

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コメント(26件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは
チューリップバブルとでもいうのでしょうか。
この花に踊らされた人たちは多かったのですね。
ウィルスによる花の模様、素敵ですが厄介者なのですね。
YAKUMA
2013/04/24 20:35
「チューリップ恐慌」なんてあったのですね?
縞模様のチューリップモザイクウイルスも興味深く読みました。
俗にいう先祖帰りも制御する遺伝子の突然変異ということでしょうか。
この頃「原種系チューリップ」が見直されているようです。
私もクルシアナを植えましたが放っておいても殖え、あっさりした花なので気に入っています。
夕菅
2013/04/24 23:52
mikomaiさん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/04/25 08:18
YAKUMAさん、コメントありがとうございました。
まさにチューリップバブルですね。バブルが過ぎ去って、法外な値段で売れた品種も二束三文になってしまいました。
Viceroyという品種の縞模様はウイルスのせいとはいえ、とてもきれいですね。チューリップマニアの気持も理解できます。
エフ・エム
2013/04/25 08:29
yasuhikoさん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/04/25 08:31
hideさん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/04/25 08:32
夕菅さん、コメントありがとうございました。
ウイルスにかかったチューリップには通常葉にもモザイク症状が出て生育が衰えるのですが、そんな植物の球根を増やすというのもけっこう大変じゃないかと思います。高値を付けたくなるでしょうね。
先祖帰りは進化の過程で失われた形質(例えば人の場合、長い尾椎とか複乳)が時たま現れる現象ですが、私は遺伝子の祖先的な組合せがたまたま生じることがあるのではないかと思っています。
クルシアナは知りませんでした。いいですね。
エフ・エム
2013/04/25 08:50
チューリップと言えば子供時分に読んだ本に「黒いチューリップ」と言うのが有りました。話の筋はほとんど忘れましたが純粋に黒色を出すのは難しいそうで臙脂色の濃いチューリップが殆どだったのをチューリップ好きの青年が黒いチューリップを作り出すのですが隣人に盗まれ開発の名誉も賞金も奪われるのですがその両方を取り返すと言う話だったと思います。
チューリップには色んな話が有ったのですね。球根一個が小麦で4トンに匹敵する高値ですか?凄いですね!
tabibito
2013/04/25 11:36
こんにちは!
1634年〜37年のヨーロッパの上流階級におこった「チューリップ狂」がなぜ起こったのか?わかるような気もしますが、それにしても異常ですね。
オランダ政府の投機売買の禁止令で鎮静化したとありました。
チューリップの人々のハートをつかむ愛らしさも要因のひとつかもしれませんね。
今も原始的なチューリップには そんな魔力があるような気がします。
今年は丁度花が咲く時期に寒の戻りできれいに咲かなかったですが、いつか原始的なチューリップの花園を撮りたいと願っています。
生駒の風
2013/04/25 15:14
チューリップに白い縞模様が入るのは病気だったのですか?
おもしろい話を聞かせていただきました。
どんな模様だろうとみてみたくなりますが・・・そんなことできませんよね。
ウィルスを広めてしまいますものね。
Tatehiko
2013/04/25 19:06
花とかめさん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/04/26 08:29
tabibitoさん、コメントと気持玉をありがとうございました。
「黒いチューリップ」は大デューマの作品なんですね。アラン・ドロン主演で映画化されたとか。私は知りませんでした。読んでみたいと思います。
チューリップの歴史はあの無邪気な花に似合わず、どろどろしたものがあるのには驚かされます。
エフ・エム
2013/04/26 08:39
生駒の風さん、コメントありがとうございました。
チューリップバブルの起こった時期をチューリップ狂時代とも言いますが、ほんとに狂気の沙汰ですね。日本では江戸時代や明治以降、園芸ブームがありましたが、もっと静かなものですね。
花を画いても、ブリューゲルのような圧倒的な表現に対して日本では端正な琳派の絵を見るとお国柄の違いが分かるような気がします。
いつか撮られる原始的なチューリップの花園の映像、期待しています。
エフ・エム
2013/04/26 09:00
Tatehikoさん、コメントと気持玉をありがとうございました。
ウイルスではなくて、品種改良によって縞のあるチューリップもありますが、ウイルスに罹ったものとは何となく区別がつきます。さすがに近頃はウイルスに罹ったものはほとんど見なくなりました。でも見つけたら写真に撮っておこうと思っています。
エフ・エム
2013/04/26 09:09
かなたさん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/04/26 09:10
I子さん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/04/26 09:11
チューリップ、ポピュラーな花だけに、歴史も深いのですね
先日、NHK BSで、トルコ高原の野生のチューリップを見ました
花は、チューリップ形ですが風が強いので花茎が短くイメージがだいぶ異なりますね
名がターバンに由来するのも納得です
風車にチューリップ畑を思い浮かべますが、もう17世紀からオランダで栽培・取引が盛んだったんですね
画家が病気のチューリップを美しいと思って描いていたなんて今から思えば、皮肉ですね
エフ・エムさんちのチューリップ、いつか何かの拍子で黄と赤の縞々模様のが出現するかも
T&M
2013/04/26 11:40
T&Mさん、コメントと気持玉をありがとうございました。
残念ながら、トルコ高原の野生のチューリップの放送を見逃しました。近頃は原種に近いものに人気があるそうですね。植えっぱなしでも毎年咲くとか。20球でも千円程度で買えるようです。ウイルス入りの球根とは比べものにならない値段です。
たしかに、風車の見えるチューリップ畑は画になる風景でしょうね。私の家から利根川を渡ったところに布施弁天という弁天様の寺がありますが、その前が広いチューリップの公園になっていて、機械でまわる大きな風車がありますが、やはりオランダの本物の風景の方がいいです。当たり前か。
エフ・エム
2013/04/27 07:31
翠弘舎さん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/04/27 08:12
ツユヒメさん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/04/27 08:13
小梨さん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/04/27 08:14
チューリップの花びらも落ちて、
今はシベの部分だけの姿となっております。
葉っぱが枯れるまでそのままにしておいて肥料をやって球根を太らせて・・・と手入れをやった事ないので
次の年には中々いい花が咲いてくれません。(>_<)
かすかに別な色が入ったチューリップ、昨年、我が家のチューリップにも見られました。
なるほど〜、遺伝子の作用なのですね。
あっこちゃん
2013/04/30 21:10
あっこちゃん、コメントありがとうございました。
写真を載せたチューリップは昨秋球根を買ってきて埋めておいたもので、どんな花が咲くか楽しみでした。
赤やグリーンの筋の入ったものが見つかったので一応記事になりました。
花は適当な時期に切り取りましたが、来年はどうなることでしょうか。
エフ・エム
2013/05/01 11:51
えのもと@秋田さん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/05/04 09:00
naominさん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/05/09 08:38
ケロ太さん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2013/05/09 08:44

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