道草の時間

アクセスカウンタ

zoom RSS アシの話

<<   作成日時 : 2014/11/21 19:22   >>

ナイス ブログ気持玉 16 / トラックバック 0 / コメント 12

以前、「晩秋の思い出:風に光るヨシの穂」として、ヨシ、すなわちアシのことを少し書きました。
http://michikusanojikan.at.webry.info/200911/article_5.html

今回はより古い名称「アシ」をタイトルにしました。

湿地や沼に普通に見られるアシの学名は Phragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud. で、英語では reed または commom reed とよび、アフリカ、アジア温帯および熱帯、オーストラリア、ヨーロッパ、南北アメリカ、つまりほとんど全世界の自然に分布している植物です。

この植物の標準和名はヨシですが、日本ではもともとアシとよばれ、古代の文学の中ではほとんどアシと呼ばれています。たぶんその後のことでしょうが、広辞苑によれば、ヨシは「アシの音が「悪し」に通ずるのを忌んで「善し」に因んでいう」とあります。ただし、その出典については分かりません。ご存知の方は教えて下さい。漢字では、アシもヨシも葦、蘆、または葭と書かれます。因みに広辞苑には「あしはら」と引くと「葦原」となっており、「葦の生えている原」という説明がありますが、「よしはら」という語は載っていません。なお、後述するヨシキリは葭原雀(よしはらすずめ)とよばれることがありますから、「よしはら」も間違いではないように思います。

今でも湿地や沼に群落をつくる植物ですが、人口も少なく、土地利用もごく僅かであった古代には、日本の平地は葦原が大きく広がっていたでしょう。古事記や日本書紀に日本は「葦原の国」「葦原の中つ国」とよばれていたくらいですから、その大規模な草原を想像できます。

万葉集にもアシに因む歌が多く含まれており、 近現代よりもアシに強い関心があったのでしょう。とくに鴨や鶴を葦原に配する歌が見られます。

葦べ行く鴨の羽がひに霜降りて寒き夕べは大和し思ほゆ 志貴皇子(64)

和歌の浦に潮満ち来れば潟を無み葦辺をさして鶴(たづ)鳴き渡る 
山部赤人(919)

鶴(たづ)が鳴き葦辺をさして飛び渡るあなづたづたし独りさ寝れば 
丹比大夫(3626)

残念ながら、葦辺をさして飛んで行く鶴(タンチョウ、マナヅル、ナベヅルなど)を見たことはありません。この時代は鶴がたくさんいて、普通に見られる情景だったのでしょうか。葦辺の寄る鴨の方は現在でもよく見ることができます。

でも、万葉集には歌われてはいませんが、葦原の鳥としてまず思い浮かぶのはオオヨシキリ。ギョギョシ、ギョギョシと大声で鳴くオオヨシキリは、詩歌では行行子(ぎょうぎょうし)とよばれることが多いようです。

能なしの寝(ねむ)たし我をぎやうぎやうし 芭蕉(嵯峨日記)

この句のたどたどしい表現から、いかにもうとうとと眠そうな芭蕉翁のつぶやきと眠りを妨げる遠慮ないぎょうぎょうしの大声が想像できて楽しめる一句です。

オオヨシキリのさえずりを You Tube に探してみました。
https://www.youtube.com/watch?v=nStQv4465A0

話を戻しますが、アシはほとんど全世界で見られ、記紀にいう「葦原の国」は日本だけではないようです。アシに冠しては、ギリシャ神話のシュリンクスの物語が思い起こされます。シュリンクスはひときわ美しい森のニンフでアテナ(ディアナ)女神を崇拝し、女神にあやかって処女であり続けたいと願っていました。その姿を好色な牧神パンにみそめられてしまったのでした。パンに追いかけられ、窮地に追い込まれたシュリンクスは水際でアシに変身したと言い伝えられています。パンは悲しみのあまり、長短に切ったアシの茎を繋ぎ合わせ、笛を作ったのでした。パンが作ったという古典的な楽器はパンパイプまたはパンフルートとよばれて演奏に使われています。最も、現在のパンパイプはアシではなく、ダンチクなどで作られているようです。

では再び Youtubeから、パンパイプの名手ザンフィルの演奏
http://www.youtube.com/watch?v=Ai578_rqk9w

および、懐かしいフルートの名手ジャン-ピエール ランパルの演奏でドビュシー作曲「シュリンクス」
http://www.youtube.com/watch?v=sMtBxnVArAo

お急ぎでない方は、ちょっと聞いてみてください。

画像

6月下旬 まだ若いアシの原



画像

10月下旬 花穂が輝く



画像

以前、3月の寒い日に写す

枯れた穂の波に寒風が見えます



にほんブログ村 花ブログへにほんブログ村 花ブログ 季節の花へ

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 16
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
アシのお話、植物と文学と音楽と美術が織り成す心地よいブログにうっとりしました。
万葉集の上2句は昔一度は覚えたことがあり、その頃のことまでなつかしく思い出されます。
パンパイプの演奏のYoutubeも耳に目に心地良くアンコールでした。
このようなブログはエフ・エム さんでないと創れませんね。
私だったら「王様の耳はロバの耳」くらいになってしまいます(笑)。
夕菅
2014/11/22 08:49
夕菅さん、コメントありがとうございました。
私の在住地は、湿地が多く、アシの原がけっこう広がっています。芦原の中つ国の名残りでしょうか。引き続きアシが表現する四季や、そこにすむ動物たちの営みなど、観察して行きたいと思っております。
パンパイプの音色は以前から好きです。その名称からの印象もあって、葦原を吹く透明な風のように感じる音色です。
エフ・エム
2014/11/23 08:47
アシ、世界各地で、古くから人と関わりのある植物なのですね、よく判りました
アシのすだれは、自然資源の活用で風情があっていいと思うのですが、
最近は樹脂製品に取って替わられ残念です(ここでも天然のを日除け用に探したのですが売っていませんでした
ここにもアシの原はよく見かけます
風にそよぐ姿など、花とは違った趣がありますね
T&M
2014/11/23 11:37
T&Mさん、コメントと気持玉をありがとうございました。
アシは世界中どこでも生え、きわめて繁殖旺盛な植物、しかも草本のなかでは大型の植物ですから、よしず位ではなく、なにかいろいろ利用法がありそうなものです。
春の花、秋の花とはまた違って、一種で四季を感じさせる植物ですね。
エフ・エム
2014/11/24 08:16
青木院長さん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2014/11/25 08:18
なーさん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2014/11/25 08:20
江藤さん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2014/11/25 08:21
放っておくとアシ原がどんどん広がってしって他の生物が生息でき鳴きなくなると聞いたことがあります。
それほど丈夫だからいろいろ利用されてきたのでしょうが、パンフルートの材料だったとは知りませんでした。
素朴な音で大好きでCDも持っていますが、今の音とは大分違っていたでしょうね。
復元してもらって、演奏を聴いてみたいです。

三枚目の写真は、ブルブル!寒い!
ちゃんと寒さも写りこんでいますね。
とんとん
2014/11/25 16:21
とんとんさん、コメントありがとうございました。
アシ原がひろがると、これはたまらんと逃げ出す生物は多いと思いますが、ギョウギョウシは大喜びですね。ヨシゴイなんか見たい鳥の一つです。自然の営みは助けられたり、助けたり、あるいは追い出したり、追い出されたり、いろいろ複雑ですね。
クラリネットやオーボエなどの弁をやはりリードといいますが、もともとは蘆の茎をりようしていたのでしょうか。今はダンチクやタケが使われるそうですが、リードという名はかわりませんね。
たしかに人間の営みにかかわりつつ、自然の暮らす興味深い植物と思っています。
エフ・エム
2014/11/26 08:54
龍さん、気持玉をありがとうございました。
エフ・エム
2014/11/26 08:58
しばらくです。楽しく楽しく読ませていただきました。
子供が昔語りを聞かせて貰っているような穏やかな一刻でありました。
目黒のおじいちゃん
2014/12/03 18:10
目黒のおじいちゃん、コメントありがとうございました。
たいへんごぶさたしております。近頃は長時間の散歩が難しくなり、ブログネタも少なくなりましたが、こんな風に続けて行きたいとおもいます。おじいちゃんの方へはしばしば訪問させていただいております。貴ブログへコメントされている方々、皆さんすばらしいですね。
エフ・エム
2014/12/04 08:29

コメントする help

ニックネーム
本 文
アシの話 道草の時間/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる