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zoom RSS カナムグラのこと

<<   作成日時 : 2015/12/17 10:01   >>

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季節外れになりましたが、秋に花が咲き、晩秋〜初冬に実が熟すカナムグラについて書いてみたいと思います。

カナムグラ (Humulus japonica Sieb. et Zuck.) は、日本列島、台湾、中国に原産するつる性の一年草で、近年はアサ科に分類されています。近縁にカラハナソウ (Humulus lipulus L. var. cordifolius (Miq.) Maxim. ex Franch. et Sav.) やホップ (Humulus lupulus L. var. lupus 別名セイヨウカラハナソウ) に比較的近縁の植物です。

ホップはアフリカ北部、アジア温帯、ヨーロッパに広く野生する雌雄異株の植物で、ビールの苦み成分は栽培された雌株上で成熟した毬果を原料とします。 カナムグラは東アジア温帯から亜熱帯に原産する1年草。やはり雌雄異種で雌株は毬果を作りますが、ホップの代用にはなりません。

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荒れ地を覆うカナムグラ



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カナムグラの雄花序と花



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カナムグラの雌花序



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成熟した毬果



ホップもカナムグラも顕微鏡によって識別できる雌性染色体 (X)と雄性染色体 (Y) をもち、ホップの雌株は 2n で常染色体18(=9対)と1対の X染色体、雄株は常染色体18と、X およびのY 染色体を1本ずつもっています。すなわち雌株:2n = 18 + XX; 雄株:2n=18 + XY 。

一方カナムグラは雌株は1対の X 染色体、雄株は X 染色体1本と、大きさの異なる2本の Y染色体 Y1 と Y2 をもっています。常染色体はともに14本(=7対)。すなわち雌株:2n=14 + XX; 雄株:2n=14+XY1Y2 。(H. Shephardら Sex determination in hop (Humulus lupus L. and H. japonica Sieb. et Zuck.): floral morphology and sex chromosomes. in Sex determination in plants. Ed. by C.C. Ainsworth 1999)

このように、性染色体の識別が可能なことから、この両植物を材料に、植物の性決定機構が研究されてきました。雌雄異株のいろいろな植物が性染色体を有することは、よく知られており、また、性染色体の関与による性決定は動物では一般的です。因みにヒトの場合は、女性:2n=44+XX; 男性:2n=44+XY 。このことから、動物も雌雄異株の植物も、類似の性決定機構が予測されるのは、興味あることです。

カナムグラは北米やヨーロッパの一部に帰化しており、Japanese hopと呼ばれています。。荒れ地を覆い尽くすほど繁茂する植物ですが、日本ではそれほど目の敵にされているような植物には見えません。しかし、クズほどではありませんが、カナムグラの侵入地帯、特に北米では、在来の植物に脅威を与えるインベーダーとして、かなり評判が悪いようです。参考のため、そのような状況を示す記事にリンクしておきます。
http://www.nps.gov/plants/alien/fact/huja1.htm

外国でカナムグラが日本よりはびこりやすいとすれば、やはり天敵がいないか、少ないためと思われます。日本では糸状菌の一種によって引き起こされる褐斑病が知られています。また、キタテハの幼虫はもっぱらカナムグラを食草としています。



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キタテハ



万葉集以来、「むぐら」または「八重むぐら」とよばれている植物は、カナムグラが該当すると言われています。むぐらの生い茂る庭は貧乏な荒れた庭ということにもっぱら使われています。古典文学に現れる「むぐら」に関しては、私のホームページに「やへ葎しげれる宿」というタイトルで、拙文を書いておりますので、ご参照いただければ幸いです。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~fusao-m/omoitsukumama6.html

最後に芭蕉の句を三句。

山賤のおとがひ閉(とづ)るむぐらかな

むぐらさへ若葉はやさし破レ家

藪椿(やぶつばき)門(かど)はむぐらの若葉哉



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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
カナムグラ・・・初めて知りました
ホップの仲間でありながら一方は利用され、これは厄介者なんですね
松かさのような実はホップに似てるのに・・・
最初の写真、まさに“生い茂る”という表現がピッタリ
芭蕉の句、むぐらを詠むことで人里離れた家という情景が見えるようです
T&M
2015/12/18 15:45
T&Mさん、コメントと気持玉をありがとうございました。
ホップのような苦味成分を持っていたら、もっとずっと優遇されたでしょう。でも何らかの薬用効果は研究されているみたいです。
キタテハにとっては、これを食草に選んだのは、幸運でした。いくらでも腹一杯食えるので。
芭蕉はさすがに的を得た句を作りますね。
エフ・エム
2015/12/19 08:21
私の庭にはヤブガラシとヤエムグラは生えたことがありますが、さすがにカナムグラは見たことがありません。
何となく帰化植物かと思っていたのですが、逆にJapanese hopと嫌われるのはクズと同じですね。
本文と「やへ葎しげれる宿」とで「むぐら」の講義を受けたような感じです。
カナムグラは雌雄異株でアサ科、ヤブガラシはブドウ科、ヤエムグラはアカネ科。
カナムグラの実物に出会ったらまた再読させていただきます。
夕菅
2015/12/21 00:26
夕菅さん、コメントありがとうございましたございました。
HPの方まで見ていただいて嬉しいことです。
美しくまためづらしい花も咲く夕菅さんのお庭には、カナムグラは生えることなど考えられません。やはり野原の荒々しいつる草です。おまけに花粉はアレルゲンになる党ですね。
しかし、北米では、薬用としてはともかく、Ornamental plantとして移入されたとはちょっと驚きです。どのように鑑賞植物として利用するのか、知りたいところです。
エフ・エム
2015/12/21 16:44
キタテハの食草がカナムグラというのは何となく意外です。
いくら食べてもはびこるカナムグラは痛くもかゆくもないというところでしょうね。
一年草だというのに広範囲に広がって、駆除する方は大変でしょうが、見る分には葉の形もよく、特に雌花序は素敵な形です。
見たら撮りたいところですが、最近出会いもありません。
とんとん
2015/12/24 11:50
カナムグラにはいいところが少しもないと思っていましたが、とんとんさんのような見方もあるのですね。
葉のかたち、実のかたちは見ようによってよく見えるとは確かにそうかもしれません。そうみれば、外国がオーナメントとして移入したことも分かるような気がします。
キタテハの幼虫はまだ見たことがありません。見てみたいと思っています。
エフ・エム
2015/12/25 09:28
今年一年大変お世話になり有難うございました。
引き続き来年もご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い致します。
うるだん
2015/12/30 09:19
うるだんさん、こちらこそありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
Macを使っていますが、バージョンアップした際、使っていたRSSを失ってしまい、登録していたURLが直接わからなくなっていました。新しいRSSリーダーを手に入れて、再度整理しているところです。うるだんさんのサイトもすぐ入れて、常時訪問できるようにします。
エフ・エム
2015/12/30 09:51

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