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zoom RSS 「クラーナハ展 500年後の誘惑」を観て

<<   作成日時 : 2016/12/29 21:55   >>

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もうだいぶ前(12月9日)になりますが、上野の国立西洋美術館に「クラーナハ展」を見に行きました。クラーナハ(父)の絵画は以前より印刷物などを見て知っていました。ルネサンス時代の絵画とはいえ、おおらかで美しいイタリアルネサンスの絵画とあまりにも異なる印象を持っていて、一度は実物を見たいと思っていましたが、実現するとは思ってもいませんでした。

ルーカス・クラーナハ(父)の生年から没年は1472〜1553。イタリア・ルネサンスの巨匠たちは、ボッティチェリ 1444(または1445)〜1510、ミケランジェロ 1475〜1564、ダヴィンチ 1452〜1519、ラファエロ 1483〜1520。すなわちクラーナハは彼らと同時代に活躍した画家なのです。

本展に展示された作品の大部分はルーカス・クラーナハ(父)の作品でしたが、、同時代の画家アルブレヒト・デューラーおよびルーカス・クラーナハ(子)の作品、その他クラーナハの絵画に興味をもったピカソなど近代の画家たちの作品を含め、91点が展示されていました。

クラーナハ(父)といえば、若い頃は美しい聖母子像などがありますが、なんといっても、1530年代の「ヴィーナス」、剣を自らの胸につき刺そうとしている「ルクレチア」の裸像の印象が強烈です。ルクレティアは古代ローマの歴史家リヴィウスの著書「ローマ建国史」の中の物語で、王の息子に陵辱された夫人が自身の尊厳を守るために自殺したのだそうです。裸形のルクレチア以前に、着衣のルクレティアはいくつか描かれています。

本展に来ている「ヴィーナス」と「ルクレチア」のネット上の画像にリンクしておきます。ヴィーナス  ルクレチア

美術館前のポスターに使われている裸婦像は「正義の寓意 (Allegory of justice)」。天秤と剣を持つ擬人像です。

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「正義の寓意」を使ったポスター



このポスターでは天秤と剣の一部しか見えませんが、ネット上の正義の寓意の全体が見える画像にリンクしておきます。ポスターの製作者の配慮が感じられます。

ギリシャ神話のテミス、ローマ神話のユスティティアは正義の神とされ、天秤と剣を持つ姿で造形されているのが普通ですから、この絵も女神像でしょうか。いかにもクラーナハらしく、とても女神のようには見えません。

チケットにある絵は「ホロフェルネスの首を持つユディト」。

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本展のチケット



ユディトは敵方の首領ホロフェルネスを酒に酔わせて、その首を打ち落とし、彼の圧政から故郷を護ったという英雄的な女性で、この物語は「旧約聖書」外伝にあるそうです。ユディトの峻厳な顔つきと切り取られた首の生々しさ。脳裏に焼き付いて離れそうもない絵です。ホロフェルネスの首を持つユディト

クラーナハ(父)は男の生首を持つ女性「サロメ」を主題にした作品をいくつか作っています。本展ではその一つが出展されていました。切り落とされてプレートに乗せられた首はキリストの洗礼者、聖ヨハネです。サロメはまだあどけない少女のような顔付きで、生首との取り合わせが異様です。洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ

ルーカス・クラーナハ(子)(1515~1586) についても述べておきたいと思います。ルーカス・クラーナハ(父)の次男です。彼の作品は油彩3点が出展されていました。2点はザクセン選帝侯アウグストの肖像画とその妻アンナ・フォン・デーネマルクの肖像画。いずれも大きくて立派な肖像画です。

もう一つは「ディアナとアクタイオン」。猟師アクタイオンは狩りの途中でディアナとニンフたちの水浴を見て、ディアナの怒りをかい、鹿に変身させられ、自分の飼犬たちに食い殺されてしまうという悲劇をテーマにした絵ですが、女神やニンフの方に目を奪われ、物語の悲劇性はほとんど感じられません。それが観客に対する作者の意図かもしれません。先頭に描かれているディアナも少女のようで、神らしい威厳は感じられません。 ディアナとアクタイオン   ただし、このネット上の画像に添えられた説明は、製作者をクラーナハ(父)および協力者たちとしています。

クラーナハ(父)に話を戻します。彼は優れた肖像画家でもあったようです。印象深かったのは、宗教改革者マルチン・ルターの肖像画です。

宗教改革者マルチン・ルター (1483~1546) は、聖職者の婚姻に異議を唱え、元修道女のカタリーナ・ボラと結婚し、クラーナハ(父)に夫妻の肖像画を描かせたのだそうです。クラーナハ(父)は終生ルター夫妻と親しかったということです。 マルティン・ルターとカタリナ・フォン・ボラ

ルターの大きな業績の一つは聖書を原典から正確にドイツ語に翻訳したことですが、その中の「黙示録」の挿絵をクラーナハが描いています。その挿絵も一部、本展で見ることができました。

「クラーナハ展」を訪れたのは12月9日のこと。上野の森はまだ初冬の季節。十月桜がが咲き、イチョウの巨木が今年最後の輝きを見せていました。

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
今年も大変お世話になり有難うございました。
時々しか登場しなくて我が儘いっぱいの私のブログにご訪問下さりコメントまで戴き恐縮でした。
来年もご指導のほど宜しくお願い致します。
どうか良いお年をお迎えください。
うるだん
2016/12/30 13:36
うるだんさん、コメントありがとうございました。
いつもお訪ねくださってありがとうございます。
私の方こそ失礼しております。
来年もよろしく。いいお年をお迎え下さい。
エフ・エム
2016/12/31 08:10
あけましておめでとうございます
年末に訪問できず失礼しました
紹介していただいたクラーナハの絵画、
まだ宗教の規制が色濃く残る時代、ルネサンスが開花したという驚きを改めて感じます
生身の女性裸像は今の時代見ても、ドキッとした妖しさを醸し出してますね
「ホロフェルネスの首を持つユディト」のリンク先画像を見ました
クリックで部分部分拡大ができるので、装飾の細かさ美しさに感じ入りましたが同時に生首の生々しさも・・・
本年もよろしくお願いします
T&M
2017/01/02 12:29
T&Mさん、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
今年も早速、コメントと気持玉をありがとうございました。
クラーナハ展はとてもおもしろかったです。「500年後の誘惑」のタイトルどおり、魅惑的です。神話、聖書、古典文学などに現れる人物を画家はどう表現するか、興味を持って見ているのですが、クラーナハの表現には驚きます。正義の女神にしてもサロメにしても、こういう表現はクラーナハ独特ですね。
ここに載せた以外の絵もびっくりするものや魅惑されるものが多くありました。
また、いろいろな絵を見て行きたいと思っています。
エフ・エム
2017/01/02 21:46
明けましておめでとうございます
今年は美術館に
足を運んでみたいと思いました

今年もよろしくお願い致します
ジュン
2017/01/04 21:02
ジュンさん、おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
近頃は、名画を見る機会が増えました。今年も楽しみです。
エフ・エム
2017/01/04 22:09
遅ればせながら明けましておめでとうございます。
クラーナハ展はNHK日曜美術館で見ました。
華奢な、壊れそうな裸身を現代のモデルと対比させて分析し、デフォルメを解明すると納得の結果になりました。
テレビ画面でさえ、妖しく輝く皮膚の色が印象的でした。
彼も宗教改革の険しい時代を生き抜いた画家だったのですね。
夕菅
2017/01/07 16:48
夕菅さん、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
クラーナハ展はよく宣伝されていたので、すごく混んでいたら嫌だなあと思っていたのですが、意外と客が少なく、どの絵もゆっくり鑑賞することができました。
イタリアルネサンスで表されている美女のような姿ではないけれど、その魅惑的な表現はすごいですね。ドイツに波及したルネサンスの絵画、デューラーも含め、もう少し調べてみたいと思っています。
今月末から「ティツィアーノとヴェネチア派」展、4月から「ブリューゲル『バベルの塔』」展があります。ルネサンス絵画も多様で面白いです。
エフ・エム
2017/01/07 19:48

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