木々は緑に
ソメイヨシノの花はいつの間にか散りはてて、いまは八重桜が花房が4月下旬のそよかぜに揺れています。ハナミズキは花盛り、フジやサツキも咲き始めました。ドウダンツツジやアセビも可愛い花穂を垂らしています。
でも、この季節、なんといっても美しいのは、木々の若葉ではないでしょうか。自然の中に生命を躍動を最も感じさせるものは、目にも鮮やかな新緑だと思います。都会の公園にも、里山の雑木林にも、新緑はあふれています。そして、樹種それぞれに緑の色調が異なり、一つの風景の中にいろいろな緑が隣り合い、あるいは混じり合う有様は何とも言えぬ美しさです。
このような美しい緑は、もちろん葉に含まれるクロロフィル(葉緑素)の色です。クロロフィルは太陽の7いろの可視光の中から、波長の長い赤色部と波長の短い青紫部の光を吸収し、中間の緑色部を吸収せず、反射します。葉が緑に見えるのはこのためです。もちろんクロロフィルの働きを助けるカロチノイドなども、色調の多様性に深く関わっているのですが。
被子植物の葉は、表と裏の表皮の間に葉肉細胞があります。表表皮の下は柵状組織といい、多数の葉緑体をもつ円筒状の細胞がぎっしり並んでいます。柵状組織と裏包皮の間には海綿状組織があり、この組織を構成する細胞はやや大きめの不定形の細胞です。海綿状組織の細胞も葉緑体を持ちますが、柵状組織の細胞と比べるとやや少なめです。
柵状組織と海綿状組織の細胞の中の葉緑体は二重膜に囲まれた楕円球で、中にはチラコイドとよばれる袋状の膜とストロマとよばれる基質の部分があります。また、ところどころで直径の小さなチラコイドが複数重なり合ったグラナという構造も見られます。クロロフィルはいくつかの異なるタンパク質と結合して、チラコイドを構成する要素となっています。チラコイドには、集光能力を高めるため、カロチノイドなどの補助色素も含まれています。
葉緑体の果たす役割は、(1)水を分割して酸素を発生させること。この酸素を利用して、動物も植物自身も生きることができるのです。(2)空気中のCO2を取込んで、それを材料にして最終的にブドウ糖をつくること。それには、葉緑素が吸収した光エネルギーによって作り出された高エネルギー物質ATPと、還元型の補酵素NADPHが必須です。すなわち、葉緑素によって吸収された光エネルギーは、葉緑体の中で、ブドウ糖に化学エネルギーとして貯蔵されたということになります。
上の過程で、光を吸収し、水の分割を行い、また電子伝達系に電子を送ってATPとNADPHを作らせるのはクロロフィルを含むチラコイドの役目、CO2を取り入れて化学反応によりブドウ糖をつくる場はストロマです。
もともと葉緑体は、独立した生物だったと考えられています。きわめて昔、核を持つ生物が、クロロフィルをもって光合成をするバクテリアのような生物を体内に取り込み、進化してきたものと思われます。その根拠は、葉緑体の持つDNAの中の遺伝子の構造が現存の光合成細菌シアノバクテリアの遺伝子の構造とたいへんよく似ていることによっています。
福島原発の大事故を思うにつけ、植物が取り入れた光合成という巧妙な自然エネルギーの利用法には感嘆させられます。人類は原子力というとてつもなく危険なものからエネルギーを利用しようと考えました。植物は光合成という全く危険のない方法できわめて巧みに、きわめて効率よく、自然のエネルギーを利用しています。水を分割して酸素を供給し、一次生産者として、光合成によって炭水化物を作り出す。油にしても、タンパク質にしても、動物たちを養う栄養は、もとはと言えば、植物が光合成によって作った炭水化物に由来するものです。木々の緑を見ながら、植物の偉大さを思う今日この頃です。


でも、この季節、なんといっても美しいのは、木々の若葉ではないでしょうか。自然の中に生命を躍動を最も感じさせるものは、目にも鮮やかな新緑だと思います。都会の公園にも、里山の雑木林にも、新緑はあふれています。そして、樹種それぞれに緑の色調が異なり、一つの風景の中にいろいろな緑が隣り合い、あるいは混じり合う有様は何とも言えぬ美しさです。
このような美しい緑は、もちろん葉に含まれるクロロフィル(葉緑素)の色です。クロロフィルは太陽の7いろの可視光の中から、波長の長い赤色部と波長の短い青紫部の光を吸収し、中間の緑色部を吸収せず、反射します。葉が緑に見えるのはこのためです。もちろんクロロフィルの働きを助けるカロチノイドなども、色調の多様性に深く関わっているのですが。
被子植物の葉は、表と裏の表皮の間に葉肉細胞があります。表表皮の下は柵状組織といい、多数の葉緑体をもつ円筒状の細胞がぎっしり並んでいます。柵状組織と裏包皮の間には海綿状組織があり、この組織を構成する細胞はやや大きめの不定形の細胞です。海綿状組織の細胞も葉緑体を持ちますが、柵状組織の細胞と比べるとやや少なめです。
葉の切片(模式図)
葉緑体の断面(模式図)
柵状組織と海綿状組織の細胞の中の葉緑体は二重膜に囲まれた楕円球で、中にはチラコイドとよばれる袋状の膜とストロマとよばれる基質の部分があります。また、ところどころで直径の小さなチラコイドが複数重なり合ったグラナという構造も見られます。クロロフィルはいくつかの異なるタンパク質と結合して、チラコイドを構成する要素となっています。チラコイドには、集光能力を高めるため、カロチノイドなどの補助色素も含まれています。
クロロフィルaの構造
葉緑体の果たす役割は、(1)水を分割して酸素を発生させること。この酸素を利用して、動物も植物自身も生きることができるのです。(2)空気中のCO2を取込んで、それを材料にして最終的にブドウ糖をつくること。それには、葉緑素が吸収した光エネルギーによって作り出された高エネルギー物質ATPと、還元型の補酵素NADPHが必須です。すなわち、葉緑素によって吸収された光エネルギーは、葉緑体の中で、ブドウ糖に化学エネルギーとして貯蔵されたということになります。
上の過程で、光を吸収し、水の分割を行い、また電子伝達系に電子を送ってATPとNADPHを作らせるのはクロロフィルを含むチラコイドの役目、CO2を取り入れて化学反応によりブドウ糖をつくる場はストロマです。
もともと葉緑体は、独立した生物だったと考えられています。きわめて昔、核を持つ生物が、クロロフィルをもって光合成をするバクテリアのような生物を体内に取り込み、進化してきたものと思われます。その根拠は、葉緑体の持つDNAの中の遺伝子の構造が現存の光合成細菌シアノバクテリアの遺伝子の構造とたいへんよく似ていることによっています。
福島原発の大事故を思うにつけ、植物が取り入れた光合成という巧妙な自然エネルギーの利用法には感嘆させられます。人類は原子力というとてつもなく危険なものからエネルギーを利用しようと考えました。植物は光合成という全く危険のない方法できわめて巧みに、きわめて効率よく、自然のエネルギーを利用しています。水を分割して酸素を供給し、一次生産者として、光合成によって炭水化物を作り出す。油にしても、タンパク質にしても、動物たちを養う栄養は、もとはと言えば、植物が光合成によって作った炭水化物に由来するものです。木々の緑を見ながら、植物の偉大さを思う今日この頃です。


この記事へのコメント
美しい新緑に食欲も湧いてくる私であります。(あっ、食欲は一年中で困っていますが・・・)
山はそれぞれの広葉樹が若葉を芽吹き賑やかになりますね。
山が笑う・・・といいますがまさしくそのような風景になるこれからの季節です。
生駒山がおおきく見えるこの時期、ただ新緑とひとくちに言えないほど その緑色の豊富なことにも驚きます。
そして、植物の緑はなんて心地よい色なんでしょうね。
山歩きがいっそう楽しい季節になりました。
今日はちょっとむつかしい葉緑体と光合成の解説が原発問題に繋がって行く見事な流れにも圧倒されました。
ありがとうございました。
クロロフィルとたんぱく質やカロチノイドがつながって、
チラコイドという組織(?)を作っているのですか?
クロロフィルの真ん中にMgがあるのですね~♪
マグネシウムがクロロフィルの構成要素なんですか
同じく、人の生命維持にも必要な元素であるのも納得です。
マグネシウムは、豆腐(にがり)、玉ねぎ、コーヒーに多く含まれているそうで、自分も好きな食品です。
充分摂取してるでしょうね
見て下さってうれしく思います。
「目に青葉・・・」、ほんとに目にまぶしいようです。ホトトギスの声は今朝、今年はじめて聞きました。まだ下手な鳴き方でした。
「山が笑う」、いい言葉ですね。そのことを意識して、里山の風景を眺めるとしましょう。
見て下さってうれしく思います。
見て下さってうれしく思います。
日本国の古里、そちらの新緑はまた格別に素敵でしょうね。
桜の下よりも、新緑に囲まれる方が、なにか心が落ち着くような気がします。
山歩きには最適の季節ですね。
今はどこも新緑、私の窓からは街路樹のケヤキの新緑が見えます。こんな美しい新緑を眺めていると、原発事故のこともしばし忘れます。
光合成の仕組みについて、私が感じていることをもう少し書いてみたいのですが、なかなか簡単ではないので、しばらく時間をおいてみようと思います。
とてもきれいですね。
チェルノブイリから25年・・・。
土を再生させるためにアブラナ科の植物がいいらしいと
一面に植えられていました。
花がかわいそうでもあり、でも役立っていると思うと不思議な気持ちでした。
原発は恐いですね。
自然破壊です。
チラコイドの構造の説明はなかなか難しいです。簡単にいえば脂質とタンパク質によって構成され、光合成に関係するクロロフィルやカロチノイドのほか、NADPHやATPをつくるための電子伝達を行う、フェレドキシン、チトクローム(タンパク質)、プラストキノン、プラストシアニンなどの物質を含んでいます。
もう少し勉強して、分かりやすく説明するように努力したいと思います。
クロロフィルは上の図のようにMgを含んでいます。クロロフィルと非常によく似た構造をもっているのは、ヘモグロビンの赤い色素の部分で、ヘムといいますが、ヘムではMgでなくFeです。ヘムがグロビンというタンパク質と結合したものがヘモグロビンです。クロロフィルもヘモグロビンも非常に重要な役割をもった分子なんですね。
見て下さってうれしく思います。
緑が目を引きますね。野草を探して帰り道、同じ様な景色に目を奪われました。
何て綺麗なんだろうと自転車を止め写真をパチパチ。
わたしはそれで終わってしまいまいたが、、ありがとうございます。勉強させていただきました。m。。m
やはり、木々の若葉が美しい季節ですよね。
葉の構造は、習った覚えはありますが、よく覚えていません。
改めて教えていただいてもう一度勉強してみたくなりました。
これから先のエネルギーについて、みんなでよく考えないといけませんね。
安易に原子力に頼るのはよくないことだと思います。
植物の仕組みが応用できたら面白いですよね。
マグネシウムは動物でも必須の元素で、タンパク質と結びついたり、骨に含まれたり、いろいろな面で重要な働きをしていると聞きました。人体には体重の0.05%含まれているそうです。野菜を沢山食べるといいのでしょうね。
見て下さってうれしく思います。
見て下さってうれしく思います。
今度の事故で原発がいかに危険なものか知らされました。水素爆発が起こったのは想定外ですって。その想定外がいかに甚大は被害をもたらしたか。本当にこの暴走を終焉させることができるのか、と思ってしまいます。作業されている方々の被ばく量が心配です。
見て下さってうれしく思います。
ほんとに新緑が美しい季節ですね。疲れた心を癒してくれるのは、この緑だと思います。今日も散歩で里山の緑を眺めてきました。
見て下さってうれしく思います。
光合成をおこなう原核生物は35億年も前にいて、そのどれかが真核生物の一つに組み込まれて葉緑体になったとすると、葉緑体には驚異的な長さの進化の歴史があるわけです。やはりエネルギーを安全に確保するには、水力、風力、太陽光を活用するとともに、植物によく学び、植物の仕組みをなんとか利用して行くことが大切と思います。
見て下さってうれしく思います。
見て下さってうれしく思います。
ドウダンツツジの花も、アセビの花とよく似ているようですが・・・私の勘違いなのでしょうか。
花の世界の不思議を感じています。
たいへん恐縮しております。 植物の素晴らしい力について私が感じるところをこれからも書いてみたいを思っています。 ドウダンツツジとアセビの花はたしかによく似ていますね。アセビの方が一つの花穂に花がたくさんついていますけれど。どちらもいろいろな品種がつくられていて、とてもきれいですね。
自然のすばらしさ、生き物のおもしろさ、生命の大切さが先生のご指導を通して、生徒さんに伝わるといいですね。
花が咲き、若葉の萌え出づるこの季節、自然を学ぶのに、最もよい季節と思います。
想定外でコントロール出来なく成る物に手を付けた、人間の奢りにしっぺ返しを頂いたと感じます。自然を超えたりコントロールしたりなんて不見識ですね。
都会では、子どもたちが自然に触れる機会が少なくて残念なことですね。でも少ない機会でも、自然に触れて、何かを学んでほしいものです。
今回の地震、津波による災害、福島原発事故はほんとうに悲しいことですが、この災害を今後絶対忘れることなく、自然と人間との関係を政治、経済、科学技術など社会問題全体を通じてしっかり考えて行く必要があるでしょう。政治家は特にしっかりしてもらわないと困ります。
見て下さってうれしく思います。
見て下さってうれしく思います。