道草の時間

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zoom RSS ノカンゾウとヤブカンゾウ

<<   作成日時 : 2009/07/19 19:56   >>

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ノカンゾウ (Hemerocallis longituba Miq.) とヤブカンゾウ (Hemerocallis fulva (L.) L. var. kwanso Regel) は里山に多く見られるユリ科キスゲ属(ワスレグサ属)の植物。今の季節によく見かけます。

この属には著名なニッコウキスゲ(別名ゼンテイカ Hemorocallis middendorfii Trautv. et Mey.) がありますが、ノカンゾウやヤブカンゾウと比べると、花柄がごく短いのが特徴です。ニッコウキスゲの写真は持っていませんが、昨年5月19日のブログにニッコウキスゲの変種 ムサシノキスゲ(var. musashiensis Hiyama) の写真を載せてあります。

ノカンゾウは本州、四国、九州に分布する日本固有種ですが、ヤブカンゾウは中国から有史前に帰化した植物と考えられてます。牧野富太郎博士によれば、中国にシナカンゾウまたはホンカンゾウと呼ばれる一重咲きのカンゾウがあり、八重咲きのヤブカンゾウはその一重咲きのカンゾウの変種で、これは中国にも日本にもあるのだそうです。ところが日本には、一重咲きのものはなくて、八重咲きのものしかない。そこで牧野博士は、日本がアジア大陸と陸続きであったころ、八重咲きだけが日本に移って広がったと推定しています(「植物一日一題」ちくま学芸文庫)。

北村四郎博士は、万葉集などの資料から、ノカンゾウが、他の美しい花とともに、すでに奈良時代には栽培されていたと推定しています。時代を下って、室町時代に書かれた「尺素(しゃくそ)往来」(一条兼良著と伝えられる)には鑑賞の草木が列挙されており、その中に萓草(ノカンゾウ、ヤブカンゾウ)も入っているとあります(北村四郎選集III 保育社)。今は、キスゲ属植物の交配によって作られた様々な品種がヘメロカリスという総称で栽培され、ノカンゾウやヤブカンゾウそのものを栽培することは少なくなったと思いますが、いかがでしょうか。

ノカンゾウやヤブカンゾウの古い和名は「ワスレグサ」です。もう一度牧野博士の「一日一題」にもどりますが、この名は萓草という漢名が日本に伝えられてから付けられた名だそうです。中国では、心が憂鬱なとき、この花に対すればその憂いを忘れるという言い伝えがあり、萓草という名にはその意味があるのだそうです。萓草はそのまま読めばクワンゾウ、現在はカンゾウです。なお、カンゾウを甘草と書くのは間違いだそうです。

万葉集ではすでに、ワスレグサを憂いを忘れさせる草としています。

大伴旅人が太宰帥として太宰府にあった時の歌
「わすれ草わが紐に付く香具山のふりにし里を忘れむがため」(巻3−324)
(私はわすれ草を下紐につける。香具山のあの懐かしい古京をひとときでも忘れようとして。)

大伴家持が坂上家の大嬢(おおいらつめ)に賜った歌
「忘草(わすれぐさ)わが下紐に着けたれど鬼(しこ)の醜草(しこくさ)言(こと)にしありけり」(巻4−727)
(憂いを忘れるという忘草を下着の紐につけたけれど、何の役にも立たないバカ草め。名ばかりであった。)

現代語訳は桜井満訳注「万葉集(上)」(旺文社文庫)のものをそのまま載せました。

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ノカンゾウ



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ヤブカンゾウ
下は6月28日のブログに出した写真を拡大したもの



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タイトル (本文) ブログ名/日時
季節の花 ヘメロカリス
http://tb.bblog.biglobe.ne.jp/ap/tb/1c01bd92d1 ...続きを見る
みーたんのブログ
2009/07/31 14:36
ノカンゾウの咲く里
梅雨の晴れ間は朝から強烈な日の光。気温もぐんぐん上昇しています。そんな中を散歩、ふと水田を一望する場所に来たところ、田の辺りに点々とオレンジ色の花の集団が目に入ります。ノカンゾウです。育ちつつあるイネの緑をバックに、この里山の花を写してみました。 ...続きを見る
道草の時間
2010/07/10 10:59

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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
ノカンゾウとヤブカンゾウのお話、興味深かったです。
ヤブカンゾウの日本へ伝わった経緯も分かりました。有史前帰化といっても、かなり古くに伝わったものなのですね。
ワスレグサ…この和名も素敵でしたね^^
humming
2009/07/19 20:59
こんばんは
ヤブカンゾウとノカンゾウのお話、大変参考になりました。
この辺りで、ノカンゾウらしき花を見ても、園芸種なのか判断がつきません。
親しまれている花の仲間なんですね・・・
YAKUMA
2009/07/19 22:54
hummingさん、コメントありがとうございました。
牧野さんの説が合っているのかどうか分かりませんが、非常に古い時代に日本に定着したのでしょうね。ワスレグサの伝説も中国からきたというのもおもしろいと思いました。
エフ・エム
2009/07/20 07:55
YAKUMAさん、コメントありがとうございました。
ヤブカンゾウの方がはるかに多く見かけますね。
園芸植物のヘメロカリスはあまり知らないのですが、どのようなものがあるのか、今後注意してみようと思っています。
エフ・エム
2009/07/20 08:10
炊飯器さん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2009/07/20 08:11
旅先でニッコウキスゲを見ることはよくあります(写真を撮ったこともあります)が、ヤブカンゾウ、ノカンゾウは…(たぶん、私が最近、散歩中見ているのは交配によってできた園芸種でしょうし)見たことがないかもしれません。中国の生薬「甘草」(こう書かれていますね)はよく漢方薬に配合されているものですね、薬用植物園でカンゾウは見たことがあります。
とても興味深く読ませていただきました。
さとみ
2009/07/20 08:18
さとみさん、コメントありがとうございました。
カンゾウは薬用植物と聞いていました。帝京大創薬資源学教室のHPにホンカンゾウは利尿、止血、消炎剤とありました。ヤブカンゾウも代用するとか。
http://www2.odn.ne.jp/~had26900/medplant/sonota/honkanzou.htm
今、尾瀬や中部の高原ではニッコウキスゲの最盛期でしょうね。もう一度見たいものです。
エフ・エム
2009/07/20 09:46
テルツマ or テルテルさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2009/07/20 16:28
エフ・エム様、おひさしぶりです。なんだかんだといって、ブログは見ていたのですが、コメントも残さずすいませんでした。ノカンゾウとヤブカンゾウのちがいなど知らなかったので、参考になりました。ユリ科の花は何となく、園芸品種かなと思いがちです。ノカンゾウやヤブカンゾウに限らず、野生のものをみたいと思いますが、今では栽培されたものが繁殖した場合も多いでしょうから、自生を見るというのは難しいのでしょうね。また、おじゃましますね。
宮城野
2009/07/20 18:23
とても興味深く読みました。 わすれぐさ(憂いを忘れさせる草)ぴったりの名前と思います。 

随分歴史のある花なんですね。ヤブカンゾウは自生を見かけますが少ないですね。ノカンゾウは少し前農家の畑に群生していました。植えっぱなしか自生か不明です。
園芸種はヘメロカリスというんですね。いろいろ教えていただいてありがとうございます!
風さん
2009/07/20 21:53
宮城野さん、コメントありがとうございました。
いつもブログを見て下さってありがとうございます。
園芸品種は外国でホンカンゾウや他のヘメロカリスを交配して作っているらしく、派手な花が多いようです。在来のヤブカンゾウやノカンゾウを一度ご覧になれば、園芸品種との区別はつけやすいと思います。
エフ・エム
2009/07/21 08:06
風さん、コメントありがとうございました。
ヤブカンゾウもノカンゾウもたくさんあるというものではないですね。ですから出会うとちょっとうれしくなります。
ワスレグサはいい名ですね。古代の人のセンスを感じさせます。しかし、家持の歌をみるとその名もあまりあてになりませんね。ワスレグサの効き目より、恋人への思いの方が強すぎたのでしょう。
エフ・エム
2009/07/21 08:14
日本のノカンゾウと中国の一重のカンゾウは、
どこか大きな違いがあるのでしょうね・・・
カンゾウは、生け花にも使って、
季節感と野趣のある素材だと思います。
長持ちしないのが残念ですが。
ミセスサニー
2010/07/11 23:35

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