道草の時間

アクセスカウンタ

zoom RSS ナズナに寄せて

<<   作成日時 : 2012/03/22 14:25   >>

ナイス ブログ気持玉 47 / トラックバック 1 / コメント 36

ナズナは別名ペンペングサと言い、広辞苑には「ペンペングサが生える」とは「家などが荒れ果てるさまをいう」とあり、一般には貧乏な生活を連想させるようです。

しかし、見た目はつまらぬ雑草に見えながら、小さな白い花が頭状に密に咲き、三味線のばちのような実をつぎつぎとつける様子はそれなりの風情をもつ植物で、その魅力にふと気付くことがあります。

江戸時代を代表する3人の俳人、芭蕉、蕪村、一茶には、それぞれナズナを読んだ句があります。

芭蕉の句は、

よく見れば薺(なづな)花さく垣ねかな

その表現は芭蕉らしく直裁的。ナズナ発見のよろこびが新鮮に伝わってきます。よく見ないと気付かないナズナですが、その存在感は確かです。芭蕉の代表的な句ではないけれど、傑作が並ぶ芭蕉の句の中で、よく見ればこの句は「ナズナ」のような存在に思えます。

この句を心に留めて作られたと推測されている蕪村の句は、

妹(いも)がかきね三味線草(さみせんぐさ)の花さきぬ

三味線草はもちろんナズナのことです。「なづな」と云わず、三味線草としたところに蕪村の技巧があります。

妹はもちろん恋人のことで、「妹」と「三味線」の連想によって作られた安易な句とする批判(山本健吉「芭蕉」新潮文庫)があります。しかし荻原朔太郎は幼な友達を追懐しての郷愁曲であり、可憐で素朴な歌と評価しています(郷愁の詩人与謝蕪村 新潮文庫)。俳句にも詩にも門外漢の私はそんなものかなあと納得してしまうところですが、この句のもつ本当の意味は安東次男の著書「与謝蕪村」(講談社学燈文庫)を読んで知りました。

この本の中の「薺の花」という一文の中に、「晩年の蕪村に小糸という年若い愛妓がいたことは、句や手紙の端々から知られる」とあります。そしてこの句に関して、蕪村から門弟の一人に宛てた手紙の文章が引用されています。

青楼の御意見承知いたし候。御尤の一書、御句にて小糸が情も今日限りに候。よしなき風流、老の面目うしなひ申候。
禁(きんず)べし。去(さり)ながらもとめ得たる句、御披判(ひばん)可被下(くださるべく)候。
 妹がかきね三味線草の花さきぬ
これ、泥に入て玉を拾うたる心地に候。此のほど机上のたのしびぐさに候。御心切(しんせつ)之段々、忝奉存(かたじけなくぞんじたてまつり)候。

安永9年、蕪村65歳の時ですが、その頃は蕪村と小糸の仲は事実上終わっていたのかもしれないと、筆者、安藤次男は推測しています。

ナズナのすがたに、蕪村の小糸への未だ断ち切れぬ思いが込められているのでしょうか。

一茶には、

行灯(あんどん)やぺんぺん草の影法師

の句があります。

花の下に三味線のばちを並べたようなナズナの茎はユーモラスな感じがします。まして行灯によって映し出される映像はちょっと普通のものじゃないでしょうね。この句に童謡のような雰囲気を私は感じました。

三者三様、それぞれ個性が句に際立っていますが、同時にナズナという植物の意外な性格が偉大な俳人たちによって、あらわにされていることに深く興味をおぼえます。

遅れてやってきた春、まだ風が冷たいのですが、畑のへりはタネツケバナ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリ、ナズナなど、春の常連が花を咲かせています。中でもナズナは茎を伸ばし、早くも三味線のばちのような実を製造しています。

下はちょうどこの季節の歌なのでしょうか。

御園生(みそのふ)のなずなの茎も立ちにけりけふの朝菜になにを摘まし

作者、曽祢好忠は平安中期の歌人です。この頃ナズナは普通に食べられていたことが分かります。

画像

画像

画像

ナズナ立つ



画像

紫峰遠望

紫峰は筑波山の別称



にほんブログ村 花ブログへにほんブログ村 花ブログ 季節の花へ

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 47
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い
驚いた

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
オークリー レンズ
ナズナに寄せて 道草の時間/ウェブリブログ ...続きを見る
オークリー レンズ
2013/07/06 04:50

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(36件)

内 容 ニックネーム/日時
私も隣の日だまりでばちをつけたナズナを撮ったばかりです。やはり白・青・ピンクの春の常連達が数種自然の寄せ植えを楽しませてくれました。
蕪村と小糸のお話、しっとりきますね。
香月泰男さんの薺(なずな)の絵も想いがこもっていました。
福島でもこの花が咲き出す頃でしょうね。
教えていただいたDNA検索、ナズナはひとつ、シロイヌナズナは2つ出ました。それ以上はわかりません(笑)。
夕菅
2012/03/22 15:53
ナズナって茎についているハートのこれ、なに?実?
これを少しおろして回して遊んだような・・・。
ハートが手のように見えて好きです。花だってかわいいですね。
ペンペングサって感じじゃないわ。ペンペン、ペンペン生えるからかしら^^
池田姫
2012/03/22 17:28
春がやってくる前から一足先に雑草達は青々と
まるで柔らかい葉物やさいのように庭を席巻しています。
なずなも元気よく蔓延っています。
本当によくみると可愛らしい姿に心が和みますが・・・
ほっている訳にはいきません。
晴れて暖かい日にはそろそろ草取りしなくっては。。。
(笑)
すみません、情緒がなくって。。。(^^ゞ
あっこちゃん
2012/03/22 22:09
こんばんは
偉大な俳人達も気を掛けていた花なのですね。
ナズナを普通に食していた。
身の回りの植物に、親しみが増しますね。
YAKUMA
2012/03/22 23:17
夕菅さん、コメントありがとうございました。
日だまりの風当たりの少ない場所は、もう春の雑草の花が一杯ですね。それらがなんと素朴な美しさをもっていることか。人のいない福島原発避難区域にもこんな花たちが咲き始めたでしょう。
香月泰男のなずなの絵は知りませんでした。機会があれば是非見たいものです。
ちかごろは、植物に関するいろいろなデータベースがありますので、暇なときはけっこう楽しめます。
エフ・エム
2012/03/23 08:43
かなたさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/23 08:46
池田姫さん、コメントありがとうございました。
ナズナの花の下にずら〜っと並んでいるのは、実です。たしかに、これを少しおろして、くるくるとする遊びがありますね。そのときの音から、ペンペングサというのだと思っている人もいるらしいですが、そうではなくて、実のかたちが三味線の撥に似ているからというのが本当のようです。
エフ・エム
2012/03/23 08:57
彩さん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/23 08:59
あっこちゃん、コメントありがとうございました。
雑草たち、野原で咲いているのを見るのはうれしいですが、庭に入り込んでいるのはたしかに油断がなりませんね。わが家の庭にもそろそろ雑草が増えてきています。わけても、オランダミミナグサ、ホトケノザが多いです。
でも草取りをしているときが、一番無心になれる時間らしいです。
エフ・エム
2012/03/23 09:07
hideさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/23 09:08
YAKUMAさん、コメントありがとうございました。
ナズナを句にした先駆者は芭蕉かも知れませんが、今は「なずなの花」が春の季語になっていて、多くの句があるようです。
ナズナはあっさりした味のようです。昔はきっと大切な野菜だったのでしょう。
エフ・エム
2012/03/23 09:18
自然の中を歩いたり、草取りをしたり、植物に接していると知らず知らずのうちに気分が晴れやかになってきますね。
昔の人はの野の草に感謝して食べていたのでしょう。
鮮度は抜群、酵素はたっぷり。
野草を見ながら、そんな頃の人々の生活に思いを馳せてみたいと思います。
とんとん
2012/03/23 11:51
エフ・エム様、写真拝見しました。ナズナが咲き乱れているようす、いよいよ春到来という感じです。子どものころは、畑に生える雑草としか思えませんでしたが、野草の写真を撮影するようになって、ナズナがとても愛おしい植物に思えるようになりました。またおじゃましますね。
宮城野
2012/03/24 04:18
私は一茶の「行灯(あんどん)やぺんぺん草の影法師」の句は影法師は一茶の貧乏たらしい姿が行灯の火あかりに壁に映されている様子と採りました。
わたしもナズナは好きな花です。
tabibito
2012/03/24 06:51
とんとんさん、コメントありがとうございました。
たぶん平安の頃も栽培野菜を食べていたと思いますが、食べられる野草を摘むことが楽しみだったでしょう。子どもの頃は摘草もしたものですが、今は農薬や放射能が心配で、そんな楽しみは過去のものになりました。
でもそれぞれの野草の個性を発見することは楽しみです。
エフ・エム
2012/03/24 08:12
totoさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/24 08:25
ヨッシーさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/24 08:26
ほたるさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/24 08:27
宮城野さん、コメントありがとうございました。
ナズナは飾り気のないところがいいですね。でも俳句や短歌の題材にもなるのですから、季節感や風情も感じられる花ですね。写真の対象としては案外難しく、一度失敗して、再度取り直しに行った結果、こんな写真になりました。
エフ・エム
2012/03/24 08:34
tabibitoさん、コメントと気持玉をありがとうございました。
一茶の句、おっしゃるとおりですね。そう思ってみると、これを詠んでいる貧乏住まいの一茶のすがたが彷彿としてきます。
句や歌を読んでから、ナズナを再度眺めるのもいいと思います。
エフ・エム
2012/03/24 08:46
こんばんわ。私もナズナ大好きです。白い花も❤型の実も好き。そして、手折れそうに見える楚々とした風情なのに、固い固い軸があってそのギャップに驚きます。他のものは生えなくても、ナズナは生えるとの生きる力も。
よしこ
2012/03/24 21:17
えのもと@秋田さん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/25 07:25
yasuhikoさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/25 07:25
kemochimeさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/25 07:27
I子さん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/25 07:27
よしこさん、コメントありがとうございました。
データベースを調べると、ナズナの分布はworld-wideで起源はどこだか分からないそうです。それほど適応力が強くて、生命力・繁殖力の旺盛な植物なのですね。案外、人の目につきにくいのですが、気が付けば元気を与えてくれる草と思います。
エフ・エム
2012/03/25 07:34
ふと「ナズナ」と「ペンペン草」とどちらの方が好きかな?
と思いました。
その時々で 呼び名を変えています。
「ペンペン草」の呼び名に親しみを感じます。「ペンペン草」からさらに飛躍して「三味線草」と歌った蕪村ですね。
深い情を感じます。いろんな気持ちが「懸けことば」としてつながっているような気がしています。
「ペンペン草」は逆境に負けない強い花ですね。
しかも小さい白い花は気高くさえありますね。
エフ・エムさんのところからも筑波山がみえるのですね。
生駒の風
2012/03/25 17:24
生駒の風さん、コメントありがとうございました。
ナズナの方が標準和名で、最も古くから使われている名称で、ペンペングサは三味線音楽が発達して、名付けられたものと思いますが、後者のほうが親しみやすいですね。
私はやはり芭蕉の方が好きですが、蕪村が高齢者になっても若い女性に恋心をもち、その心を俳諧に表現するところは大したものだと思います。春風馬堤曲でもそう思うのですが。 ペンペングサは今一番元気、逞しさには感心します。
エフ・エム
2012/03/26 09:18
daoさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/26 09:20
ナズナ、正直、目立たない植物ですね
でも、こんなに俳句にも歌われているとは・・・・先人たちの感性の高さに驚きました。
中でも、影法師に気付くなんて、思いもよらない事でした。
昔はナズナも食されていたのも驚きです。
今のような野菜の種類も無く、周りに生えてるものを食していたのでしょうね
だから一層、周りの自然と親しくなっていたのでしょう。
花も、ここで初めて見せて頂きました
T&M
2012/03/27 16:09
T&Mさん、コメントと気持玉をありがとうございました。
俳句もやはりわびさびの世界ですから、目立つ花より目立たない花の方が合っているのかも知れないですね。影法師もナズナなら可愛いと思います。
野菜はあっても野草の方が手っ取り早いのかもしれません。そういえば、平安時代に野菜を詠み込んだ歌はあるのかしら。昔の人の方が自然に親しんだのは確かでしょうね。
エフ・エム
2012/03/28 14:34
食べることができるのにいすっかり雑草扱いでかわいそうにも感じますね。
ペンペングサの名も先生の解説を読めば親しみが持てますが、イメージ的にはあまり良くない点もかわいそうに感じます。
でも歴史のいろんな場面、人物や生活にかかわってきたことを考えるとまだまだ奥が深そうですね。
松の陰
2012/03/28 22:30
このみさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/29 08:15
松の陰さん、コメントと気持玉をありがとうございました。
ナズナは摘草の代表的なものだったのでしょう。広辞苑には、ナズナなど七草について、「古くは正月7日にあつものにした。後世はこれをまないたにのせて囃してたたき、粥に入れて食べた」とありますから、よほどなじみの食材だったのでしょう。ナズナは世界中に普通の植物ですが、西洋ではどうだったのか、興味があります。
エフ・エム
2012/03/29 08:24
なーさん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/03/31 09:20
ケロ太さん、気持玉をありがとうございました。
見て下さってうれしく思います。
エフ・エム
2012/04/05 08:48

コメントする help

ニックネーム
本 文
ナズナに寄せて 道草の時間/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる